私は、お客様に「生産性を高めましょう! そのためには、計測が大事です‼」ということをお伝えして、支援をしています。計測が大事なのはその通りで、計測して可視化することが生産性向上の出発点だからです。
一方で、自分の仕事は計測できているのか?支援という仕事ではまっとうなことをいいつつも、自分はどうなのかということをふりかえると、コンサルタントの仕事を始めてからは、計測しています。
仕事の性格から、厳密には取得できないのですが、Toggl Trackを利用して日々何に何時間を掛けたかを記録してきました。

ちょっとアイデアを思いついた
このToggl Trackですが、カレンダー形式の画面に、依頼元、プロジェクト、タスクを時間を指定して入力できます。タグも使用できるので、作業時間の可視化は大変便利でした。
が、最近は少し不便を感じていました。時間がどのように収益に結びついたかを把握したいと思ったのです。例えば、A社へ訪問するといくら儲かったかを確認できるようにしたいと考えるようになりました。
しかし、これが単純には設定できません。例えば、ある案件があったときに、その案件での作業時間は必ずしも有償とは限らないからですね。準備の時間、移動時間、支援の時間と収益の内訳は異なります。契約によって、どの時間が収益となるかは異なります。
やはり、汎用のSaaSでは、ここまで自分の契約に合わせるのは難しいですよ。
Claudeと雑談してたらアプリができた
私はここ2年くらい、だいたい毎週ClaudeかChatGPTとふりかえりを行っています。このふりかえりの中では、Toggl Trackの記録を定量データとして、分析していました。
先ほどの「時間がどのように収益に結びついたか」を実現したいことを話をしていたところ、ClaudeがGoogle Apps Script(GAS)で作成してみようか?となりました。どんなものが出てくるかと思いつつ、依頼してみると希望に近いものが作成されました。
入力画面は、このような感じで週ごとのカレンダーに時間を入力できます。入力した内容はGoogle スプレッドシートに保存されます。作業時間から金額を計算することができるようになりました。

日々の収益を計算できるようになったので、週次、月次、取引先毎の収益性も分析できるようになりました。

さらに、稼働時間をタグで分類しているので、例えば1回あたりの支援時間に対してどの程度の準備が発生したかがわかるようになっています。コンサルティングの仕事は、最初は顧客理解のため稼働時間が長くなり、徐々に低減していく傾向があるのですが、週次・月次の推移を見ればわかるようになります。

※上記の画面はすべてデモデータで適当な値が設定されています。
アプリを使ってみてどう変わったか
使ってみてわかったことは、正直に言うと当たり前のことでした。
- 単価の高い案件でも、移動と準備が長いと実効単価は大きく下がる
- 売上の構成比よりも時間の構成比のほうが大きい案件がひと目でわかる
どちらも、なんとなくはわかっていました。変わったのは、それが「どの取引先で」「どのくらい」なのかが数字で見えたことです。「移動が長い気がする」と「この案件は総投入の3割が移動」とでは、次の打ち手を考えるときの具体さがまったく違います。
とはいえ、数字だけを見て「移動が長い案件はすべてリモートにすればよい」とはなりません。現場に行かないとわからないことは多く、訪問そのものが信頼関係をつくる時間でもあります。
数字が判断を代わりにしてくれるわけではありません。ただ、「この訪問にはこれだけのコストを払っている」とわかったうえで選べるようになりました。たとえば、「最初は訪問して情報を集めるが徐々にリモートも取り入れていく」といった判断を、感覚ではなく根拠をもって考えられます。
これは、私がお客様に「まず計測しましょう」とお伝えしていることそのものでした。計測は、新しい発見のためというより、知っているつもりのことを判断に使える形にするためにあるのだと、自分で使ってあらためて感じました。
どうして簡単にできたか
ところで、どうして簡単に(15分程度)で構築できたかですが、毎週のふりかえりでTogglの不便さや自分が考えている課題を伝えていました。最近はTogglからデータを取得して、スプレッドシートにまとめる、つまり今回作ったダッシュボード機能の原型のようなものを生成AIと作成していました。このような状況がありつつ、具体的にどのようなことができるとよいかを話した結果、ウェブ化しましょうとなったのだと思います。
つまり、Claudeとの対話の中でコンテキストが明確に作成されていて、こうすればできるよ?というレベルまで見えていたから仕上げが15分くらいだったのだと思います。
今回うまくいったのは、コンテキストがすべて私一人の頭の中にあり、それを私自身が生成AIとの壁打ちを通じて言葉にできていたからです。どの時間を売上とみなすか、日額の仕事を何時間で1日と数えるか。こうしたルールを決めたのはAIではなく私で、AIはそれを形にしただけなのです。
SaaS is Dead
少し前に「SaaS is Dead」という言葉が流行りました。今回私はToggl Trackの利用をやめたので、ひとつのSaaSをやめたことにはなります。ただし、これはあくまで個人が使うツールの話で、組織で使うシステムの話ではありません。
組織のシステムでは事情が変わります。コンテキストは複数の人に分散していて、部署ごとに食い違い、例外があり、時間とともに変わります。しかも、その多くは言葉になっていません。システムづくりで本当に大変なのはコードを書くことではなく、このコンテキストを集めて整理し、合意をつくることです。今のところ、AIはそこを代わりにやってはくれません。さらに、組織で使う以上、安全にいつでも使える状態を保つための手間もかかります。
生成AIで作れるものが増えたからこそ、「自分用のツールで十分なもの」と「組織のシステムとして整えるべきもの」を見分けることが大切になっていると感じます。そして、どちらの場合も出発点は同じです。何に時間を使い、それがどう成果につながっているのかを、まず測って言葉にすることです。
当社では、時間と収益の可視化や、その前提となる業務のルールの整理をご支援しています。「なんとなくわかっているけれど、数字では見えていない」ことがあれば、お気軽にご相談ください。
